2017年02月21日

映画:この世界の片隅に

ものすごい映画を見てしまった・・・。

なんとも、なんとも、美しい映画です。




片渕須直監督&脚本の「この世界の片隅に」の評判が恐ろしく良いのは知ってましたが、土日は家事やら録画消化やら人との約束やらで忙しく、なかなか見に行けませんでした。

もういいやDVDで、とあきらめかけていたところ、近所の映画館で上映されることになって、それもそろそろ終了だったので、えいやっと会社早退して(おい)、先週一人で観に行きました。

2016年の大ヒット映画といえば、何をさておいても「君の名は。」ですかしら。
それと「シン・ゴジラ」。
私は両方とも見に行きましたが、「君の名は」の桁違いの映像美にも「シン・ゴジラ」のゾクゾクするような臨場感にも圧倒されまくりでした。

特に「君の名は。」の息を呑むアニメーションは記憶にでんと居座っているので、「この世界の片隅に」の上映が始まって最初の5分くらいは、正直軽い落胆は否めませんでした。
でもその5分を過ぎれば「比べるのは野暮だよな」という自制心すら不要なほど引き込まれていて、ただスクリーンに見入るしかできない観客の一人になっておりました。

もっと言えば、私はその2時間超、その時代の広島市、そして呉にいました。

ひなびた、なつかしい水彩の風景のただなかで、「すず」の傍らに佇んでいました。

すずも、すずの夫・周作も、家族も、最後に出てくる小さな女の子も、アニメ―ションではなく、体温と脈を宿した人間でした。
観終わったあと、しばらくは「この世界の片隅に」のことだけを考えていて、数日たって喉元にこみあげるのは「もう一度、あそこで生活している皆に会いにゆきたい」という思いでした。

原作の漫画はかなり前に読んだことがありました。
「夕凪の街・桜の国」に静かな衝撃を受けて以来、こうの史代さんの著書を次々読んだ時期があったからです。

スクリーントーンを使わないきめ細やかな絵柄はほのぼの温かく、どのお話もさりげないやさしさに満ちているのですが、伏線や示唆までがさりげなさすぎて、私のように目が節穴仕様になってる人は、大切なとこをうっかり見逃すハメになるのです。だから何度も何度も読み返すことになります。

映画はかなり原作に忠実につくられています。
片淵監督の原作に対する愛の深度がもうただ事ではないというか・・。

能年玲奈あらため「のん」の声は、おっとり天然、どこかユーモラスなずすのイメージにぴったりで、遊郭の女性・リンの所作ははっとするほどつやっぽく、白黒の漫画の登場人物に鮮やかな命を吹き込んだアニメーターや声優の皆さんには脱帽するしかありません。

ヨコハマ映画祭 1位
キネマ旬報ベストテン 日本映画1位(アニメ映画では「となりのトトロ」以来)
毎日映画コンクール日本映画優秀賞
大藤信郎賞
ブルーリボン賞監督賞

この映画の受賞歴はすごいことになっているようです。

もちろん私の中でも、2016年度のベストワンでございます。
といってもさほどたくさんの映画を見たわけではないのですが、たとえ100本見ていたとしてもベストワンだったはず(たぶん)。

できれば上映期間が終了しないうちに映画館で見て、空気を共有してほしい映画です。
私もまた見に行きたい。
どうしてももう一度見たい、なんて思うの何年ぶりでしょうか?

この映画はクラウドファンディングで制作資金協力を募ったことでも有名らしいのですが(私は鑑賞後はじめて知りました)、ファンディングに協力した一般の方々と思われるお名前が、エンドロールにだーーっと大量に流れるんですよね〜。
一生に出会える映画のなかで、おそらく最も優れたものの一本に数えられるだろう名作に自分の名が刻まれるなんて、どんなに誇らしいでしょうか!
羨ましくて羨まして身悶えておりますッ!

そして原作ももう一度読みたくなって、kindleで上中下巻買ってしまい、激しいリピ中でございます。

・・・ああ、なるほど、遊郭のリンさん、もっと出番が多かったのかあ。
しかも北条家とかかわりのある人だったのね・・・ふむふむ・・・



posted by KIKI歌野 at 07:52| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

カルテット5話 ネタバレ感想 これぞドラマだ!

やったー!

1.3ポイントあがったぁぁ〜!


と小躍りした2月15日(水)の午後1時でした。(会社の昼休み)

ええもう、下がり続けるカルテットの視聴率に薄氷を踏む思いだったものですから、実に爽快な水曜日になりましたよ。


連続ドラマの回が進むごとに
「あ、なんか面白くなってきたかも」
って思うのは、実はドラマの出来云々というより、登場人物にだんだん慣れて愛着がわいてきたせいだったりします。

もちろん視聴者に愛着をわかせた時点でそのドラマは大成功と呼べるんですが、それだけじゃない、別格と呼べるドラマがやはりあって、今期クールではもちろんカルテットなんですが、残念ながら私の周囲では見てる人少ないです。

話を振ってみても、

「一話見たけどなんかつまんないからやめた」

で会話終了ってことがあって、やっぱりなァと肩を落としたものです。


何が言いたいのかわからない。
テーマがダイレクトに伝わってこない。
どこに向かうつもりか行方不明。
コメディなのかミステリーなのか恋愛なのか大人の自分探しなのかとにかくなんなのか中途半端!

と並べたてるとまるで駄作なようなのに、どう見ても傑作寄りであるという矛盾。
こんな矛盾、今まで見たことがありません。
どんなドラマかひとことで言えない、このようなドラマを今まで見たことがありません。

「全員片思い」って売り文句があるみたいだけど、それ期待してると肩透かしを食らうでしょこれは。
巻さんのご主人(クドカンかよ!ww)生きてたからミステリー路線も消えたし。

巻さん、別府さん、家森さん、すずめちゃん。
この四人が毎回違う音楽を一緒に奏でてくれるお話なんですよ、としか。


坂元脚本って、即興あやとりみたいな台詞の応酬に中毒性があるんですよね。
あやとりって一見遊びだけど人間対人間の真剣勝負で、あちゃーってなる瞬間も凄いカタルシスが体を下る瞬間もあるじゃないですか。
ただの糸が手指だけで縦横無尽に変化し一瞬一瞬で化け続ける面白さ。

私は固唾をのんでその応酬を見守っているわけですが、時々「あ、ウザい」がちくっと来て「もっとストレートに言やあいいのに」と思うこともあって、坂元脚本が苦手な人の気持ちもわかるんです。

ところが5話にはそのウザさがまったくありませんでした。
それどころか、スリリングな会話劇に圧倒される喜びを久しぶりに堪能しました。

あのシーンはもうアートですよ!
無形文化財に指定したい!

そう、あそこです。失踪した巻さんの夫について容赦なく問い詰めるアリス、受け流そうとする巻さん、動揺しまくるすずめちゃんの三つ巴。

小悪魔アリスを演じる吉岡里帆は、異次元レベルの性悪役がハマる人で、「美女と男子」でも「ゆとりですが何か」(両方とも良ドラマです!)でも、「なんなんだこの女は?!」っていう好感度ゼロな役どころでしたが、今回ばかりは脱帽でした!

大好き、大好き、大好き、大好き、殺したいって!

あの恐ろしい表情、絶対に忘れませんよ。
実力派女優2人を向こうに回して、あの緊迫した会話劇を見事に操縦し、場面を乗っ取ってみせました。

巻さんを監視してたことがばれて、ただ黙って涙を落とすすずめちゃんが切なかった・・・。

すずめちゃんのお父さんが死んだとき、あんな勇気のあるセリフを言ってくれた人だもんね巻さんは。
詐欺師まがいのお父さんのせいで日本中から「嘘つき」呼ばわりされて、想像を絶する人生を送ってきたすずめちゃんには、今まで友達が一人もいなかったから、巻さんを裏切ってた(わけじゃないんだけど)事実をこんな不本意な形で知られてしまった辛さはいかばかりだったか。

それにしても、陳腐なセリフも予定調和のセリフも決して言わされることはないこのドラマの役者さんたちは、きっと役者冥利に尽きるだろうと思います。

それに、なんなんだろうこの細かさ!
台詞言ってないときでも全員こまっかい表情や仕草してるもんだから、それ確かめに何度でも見ちゃうんですよ!
恋人や夫婦で相手の携帯を勝手に見るかどうか訊かれて、四人全員が同時に喋るとこだけでも5回は再生しましたもんね。

別府「僕はだいたい平気です」
すずめ「プライベートはあんまり」
巻 (なんつった?)
家森「見るけど見られるのはいやだ」

家森さん最低すぎてラブゥwwww






posted by KIKI歌野 at 08:14| Comment(0) | ドラマ感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

マダム・イン・ニューヨーク

いやあ、ステキ映画でした!

マダム・イン・ニューヨーク
原題 English Vinglish


2012年のインド映画です。
日本公開は2014年6月で、観た人の間では評判だったようですね。
私はdtvという動画配信サイトでこないだ鑑賞したのですが、とっても清々しい、心楽しい映画でございました。

非英語圏の映画で「面白い!」と感じると、邦画や英語圏のやつと比べて三倍がた充実感をもたらしてくれるような気がするのはなぜでしょう? 異文化の障壁を克服したような疑似体験ができるからでしょうか?

あらすじはシンプルで、ニューヨークに住む姪の結婚式の準備を手伝うため渡米したインドの主婦が、英会話学校で出会った人々のふれあいを通して、人として成長していくというお話。

主演はシュリデヴィ。
インドの吉永小百合だそうで、ど美人です。
しかもこのお顔でアラフィフですってよ奥さん!

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インドにおける美人は世界一の美人だと思う

シュリデヴィ演じる「シャシ」は、ビジネスマンの夫、夫の母親、中学生の娘と小さな息子と共に暮らす、料理上手の主婦です。
シャシお手製の「ラドゥ」(インドのお菓子)の味は近所でも大評判で、ケータリングサービスもするほどの腕前、そのうえ美人で気立てもよくて百点満点の女性・・のはずなのに、夫や娘からは何かと小ばかにされています。
なぜなら英語ができないから。

ハ?何それ? と思ってしまうのですが、インドの第一公用語はヒンディー語で、英語は第二公用語。普通に教育を受けた人間なら、英語はできて当たり前なのだそうです。
第二公用語の普及率はイギリスによる植民地時代が長かった歴史もあり、日本とはくらべものにならないくらい高いと思われます(と言ってもインド人の英語って独特すぎて、非インド人が聞くと英語ってことすら気づけないんだよなあ)。

それにしても、この反抗期の三つ編み娘がめちゃくちゃ憎たらしい。
それが親に対する態度か! って無関係な私がしばきたくなるくらいには鼻もちならないティーンエイジャーです。
シャシの夫も妻を見下す発言をちょいちょいかましてくる。娘をたしなめるどころか一緒になって笑ったりとかね。

シュリデヴィの大きな瞳は感情豊かで、家族の暴言に波立つ心が手に取るようにわかる。
頑張っても褒められることがない主婦という立場も重なってコンプレックスを募らせるシャシの姿はとてもリアルです。

そんな彼女が単身ニューヨークに渡り、セルフサービスのカフェでまともに注文できず、いかにもニューヨークっぽい攻撃的な黒人店員に怒鳴られるシーンがあります。

「はあ? 何が食べたいのかちゃんと言いなさいよ! あんたの後ろに並んでる列が見えないの?」

と罵倒されて動揺するとこ、刺さりました。
店を飛び出して、よよよと泣き崩れちゃうシャシが可哀想で可哀想で(でもあくまで美しいの! 美人は得だ!)。

しかしヒロインはめげません。
ふと見かけた英会話学校の看板の電話番号にかけ(英語わかんないのにすごい度胸だな)、即座に入学を決めたのでした。そこで出会った先生やいろんな国の生徒と一緒に英語を学んでいく日々が始まるのです。

この映画の見どころはまずシャシの美しさ。
色鮮やかなサリーをたなびかせてニューヨークの街を歩く彼女の姿だけでも観る価値があります。

そしてクラスメートのフランス男!
彼のやさしさに胸キュンですよ!
典型的な美男子ではないけどリアルにかっこ良くて、たどたどしい英語と流れるようなフランス語に萌えます!
フランス語の持つ音楽性のせいか、フランス男にしか持ちえない色気が漂ってるんですよね〜。
シャシの夫との対比で、彼の良さがなおさら引き立って見えます。

そしてクライマックスのシャシのスピーチは必見。
ハリウッド映画みたいなゴリゴリの自己主張じゃなく、控えめな凛とした存在感にあたたかな感動が胸に広がること間違いなし。特に女性にとってはなんとも心に沁みるものがあります。


ガウリ・シンデー監督は新人で女性だそうですが、好きな映画監督は「ウディ・アレン」とのこと。
そのせいかアメリカナイズされた洗練の風味が映画全体に漂っています。
悪く言えば大衆的なつくりで、努力なしでストーリーに入り込めちゃう間口のひろい映画なのに、決してありきたりに感じさせないセンスの良さ。

これは佳作!
おすすめです!




posted by KIKI歌野 at 21:02| Comment(2) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする